倉阪鬼一郎『42.195』読了

42.195 (カッパノベルス)

42.195 (カッパノベルス)

東京グローバル・マラソンで2時間12分を切れ。
さもないと息子を殺す。
会社の人間には絶対にもらすな。
 
 無名のマラソン選手・田村健一の長男が誘拐され、奇妙な脅迫状が届いた。金銭の要求はいっさいない。警視庁捜査一課特殊犯罪捜査一係の喜多川警部は推理を重ねるのだが決め手が見つからない。犯人の目的はいったい何なのか? 子供の命は!? 無情にもレースは進む──。焦る捜査陣をあざ笑うかのように、奇妙な誘拐事件はますます不可解な様相を見せはじめる……。(裏表紙より)

 目的のわからぬ誘拐事件に始まり、都市マラソンという衆人環視の状況下での誘拐犯との駆け引き・身代金*1の受け渡しを描く、実に真っ当な捜査小説系ミステリ。……だったはずが、なぜこんなことになってしまうのか。それは「作者が倉阪鬼一郎だから」である。それ以外に言い様がない。
 訓練されたクラニー読者であれば、大体半分も読んだ時点でこの作品のオチは100%の精度で予測できるのでありますが(なんか『大鬼神』のときと全く同じ事を言っているな)、鬼一郎先生の作品に限って言えば、それはなんら瑕疵になりません。むしろこの「押すなよ?」「絶ッ対に押すなよ?」というフリをぶんぶん見せ付けながら読者を230ページも我慢させる、このことによってある種のカタストロフィを生じせしめる、それが先生の得意戦型なのだと思われます。いや、ほんとしょうもないですね! でもなんかほっとけない。それが鬼一郎先生というお方よ。
 評価:【C+】(やっぱり低い)

*1:正確には“金”ではないのだが