秋田禎信『我が運命導け魔剣』読了

 読んだ。うん、軽いな。しかし、ぴょんぴょん飛び跳ねるような軽さではなくてだな。こう、爺さんぽい落ち着いた所作の中にふと垣間見える乾いた軽さというかな。お話自体はウェットに寄り始めている頃合なのだが、文章から受け取る印象はあくまでドライ。面白かった。予感は間違っていなかった。
 ここまでの話の流れとしては、西部編のラストで世界の秘密が色々わかり*1、同時にちょいと大陸滅亡の危機があったりしたものの*2主人公姉の犠牲によってそれは一旦延期*3。主人公には行方不明になった姉の捜索という新たな目的が生まれるが、当てもないのでとりあえず近場の温泉街に行ってうだうだしてたらそれだけで11巻と12巻が終了した。という感じか。ようやく新展開の13巻。
 新展開ということで、それなりに新キャラが出てくるのだが、そうだった、この新キャラどもの目的というか、行動原理が今ひとつ掴みづらいのがストレスだったんだよなーと思い出した。一話完結形式ではなくなるので、謎のキャラが謎のまま次巻に持ち越されるケースも増える。そして何よりコルゴン。元より「何を考えてるのかわからない人物(実は何も考えていないかもしれない人物)」と評されていたが、こいつが本当に最後まで何考えてんだかわからないんだよなあ。今回の再読では彼に注目して読みたい。少しは何かわかるだろうか。
◆今巻の新キャラ
  • ロッテーシャ
    • 剣術道場の師範代。17歳女。父の死後若くして道場を継いだが、同じく父の遺した魔剣フリークダイヤモンド(天人種族の魔術道具)を巡る抗争に巻き込まれてひどい目に遭う。具体的にはコルゴンに斬られて致命傷を負う(が、レキの魔術で一命を取り留める)。
    • コルゴンとは元夫婦。
  • ヘルパート
    • 人間に擬態したレッド・ドラゴン種族。ドラゴン種族の聖域から派遣されたエージェントであり、フリークダイヤモンドの奪還が任務。強い。らしいが、他のドラゴン種族と比べるとあんまり強くなさそうに見える。
  • ライアン
    • 聖域のエージェント。ヘルパートの相棒であるが、人間。同じくフリークダイヤモンドを狙い、ロッテーシャの道場に門下生として潜入していた。
    • 天人の魔術道具『緑宝石の鎧』を使う。強い。が、その外見は緑の全身タイツであり、激ダサ。
  • コルゴン
    • ロッテーシャの元夫。離婚後はフリークダイヤモンドを狙い、彼女の道場に抗争を仕掛ける。
    • しかしてその正体はオーフェンの兄弟子であり、チャイルドマン教室のメンバー。教室中最強と呼ばれており……、まあ、あの教室は“最強”のバーゲンセールなのでアレだが……、とにかくあれだ。強い。
    • 名前が色々ある。ロッテーシャの前ではエドと名乗っていた。
 この巻で謎なのは、そもそもなんでみんなフリークダイヤモンドを狙っているのか? という部分だな。ドラゴン種族の作った魔術道具とはいえ、それこそドラゴン種族にとっては玩具のようなものではないか、という部分。これって後で説明されるんだったか。忘れたな。
 そしてコルゴンの行動。剣を奪うためにゴロツキを率いてロッテーシャの門下生を闇討ちとか、迂遠すぎる。剣がライアンの手に渡るとすぐに興味を失くしたようにも見えるし。ロッテーシャの手から離れればそれで良かった、とか? やー完全に忘れてるな。すごい素直に楽しめてる。ここら辺を気にしつつ、次巻へ。

*1:そりゃあ90年代のラノベだもの、世界に秘密の一つや二つあるさ!

*2:そりゃあ90年代のラノベだもの、世界滅亡の危機の一度や二度あるさ!

*3:完全にどうでもいい話であるが、最近は犠牲というとNARUTOを思い出してしまって困る。「アザリーは犠牲になったのだ 古くから続く始祖魔術士結界の不備…その犠牲にな」