スカイ・クロラとプッチ理論

 観てきました。当然のことながら。
 尺で言って95%くらいまでは驚くほど原作に準拠した内容。最後の5%に差し掛かったところでファーストプレイ時には出なかった選択肢が出現、別エンドへ……というノベルゲーの如き展開。まあループものだからな。そりゃあノベルゲーにもなる(しかしループものばっか観てる気がするな最近)。
 観ていて一つ思い出したのは、ジョジョ六部のラスボス・プッチ神父のこと。彼の言う「未来を覚悟した者は幸福である」理論。
 プッチ神父は電波であり、そのオレ理論実践のために世界を創り変え、結果として未来の可能性を閉ざしてしまったがために、主人公陣営の少年に倒されることになる。ジャンプ漫画の主人公は可能性に生きる生物だからだ。しかしスカイ・クロラは少年漫画ではない。少年漫画ではないので可能性を無根拠に信じる少年は出てこないし、この世界もプッチ神父のような一個人の邪悪によって創られたわけではない。
 プッチ神父が手を下すまでもなく、既に我々全員が、あまりにも劇的でない人生の予感に苛まれているのだとしたら、それはもう、覚悟して生きるしか幸福になる方法はないのではないか。
 僕のようなやけっぱちワナビーには大変突き刺さりそうな映画に思えた。……が、実際のところそれほど刺さらなかった。リーマン生活も三年目を数え、僕もいい加減やけっぱちワナビーではなくなってきたのか。それとも自分が撃たれていることにも気づかないほど鈍くなったか。どっちだ。