古橋秀之『超妹大戦シスマゲドン(1)(2)』読了

超妹大戦シスマゲドン (1) (ファミ通文庫)

超妹大戦シスマゲドン (1) (ファミ通文庫)

超妹大戦シスマゲドン2 (ファミ通文庫)

超妹大戦シスマゲドン2 (ファミ通文庫)

 買っちゃった……。そりゃ全二巻って言われりゃね。合わせて1000円強の出費で済むって言われりゃね。そりゃ買うさ。そりゃ買うよ。
 あらすじ。イモート・コントローラー、通称“イモコン”(ダジャレですよ!)なる超科学アイテムによって人外パワーを引き出された妹たちが天下一武道会っぽいものを戦う。あと復活を果たした“超古代妹”とも戦う。オーヴァ。
 いや、甘く見てました。ほとんど出オチみたいな作品ゆえ、実際読んだところでタイトルを上回るような衝撃はあるまい、とかいう私の事前認識はチョコラッテのように甘々でした。既に身構えていたはずのこちらの心をさらにヘシ折る恐るべき仕掛けが満載です。読者投稿による「ぼくの考えた妹」コーナーとかね、もう、脳がよじれる。
 よじれた一例:
  • 最初の対戦相手であるネコミミ幼女妹からして戦闘時には二メートルを超える巨躯に変身。ビスケット・クルーガーメソッド。古橋先生、40ページで早くも萌やす気が失せています(だがそれがいい)。
  • 第二の相手は“歩くよりも掘る方が速い”ドリル妹・堀チエミ(シンクロニシティ!)。
  • ドリル妹をジャガって登場、邪神妹・海冥寺ルリエのスカートの中に“名状しがたいもの”(このあたりから『○○妹』の○○に入るワードが投げやりになってくる)。
  • 妹が一人一体などと誰が決めた? そう、あの有名な“十二人の妹を持つ男”、堂々の参戦!
  • しかしそこに、中国代表・百八の妹を持つ男が現れて……!?
 ここまでで大体上巻が終了。まだ上巻。
 で、下巻。下巻では軽く全選手入場ネタなどを挟みつつ、予選を突破した八妹による決勝トーナメントが始まるわけですが、ここから先は英国代表イーシャ・ダルシェマの一人舞台といった感があります。 幻の格闘技“ヴィクトリアン・ヨーガ”の使い手。

「──あれはもしや、ヴィクトリアン・ヨーガ!?」
「なに、知っているのか烏山サトル!?」
「別名“ヒンドゥー・ボクシング”! 十九世紀イギリスに発達した紳士のスポーツ・ボクシングとインド伝来の心身修養法・ヨーガの合わせ技──ヴィクトリア朝下の英国領インドにのみ生まれ得たと言われる伝説の格闘技だ!」

 具体的に何をするかというと手足が伸びます。ヴィクトリアン・ヨーガ。要するにダルシムなんですが、しかし、イーシャ・ダルシェマさんは移動時にも伸脚の術を使うことにより、ダルシム最大の弱点であった機動力の低さを克服。近接戦闘において、手足が伸びるということがどれだけ強力なアドバンテージなのかということを教えてくれます。ルフィも少しは見習うと良い。
 さて、この他にも数々の超妹たちによる超絶バトル、武道会を影で操る黒幕の判明、超古代妹復活、と見所はいっぱいなのですが、長くなるのでその辺は割愛。「ここから先はキミ自身の目で確かめてほしい」。最後は下巻屈指の名台詞を引用しつつお別れしたいと思います。黒幕に向け主人公兄が放った二十二世紀型名罵倒。

「おまえは妹のカタログスペックにしか興味がない! 妹を真に愛してはおらん! ぶっちゃけこの会場で、妹を嫁にする覚悟がないのはおまえだけだッ!!」

 評価:【A】【心】