『ごっちゃんです!!』を褒め称える(前回の続き)

 確かに、『ごっちゃんです!!』は色々と不安要素を抱えた作品であった。
 今時テーマが相撲、「ごっちゃんです」としか喋らない主人公、カチの気持ち悪い背毛、等々挙げたらキリがない。そもそもつの丸作品は常に絵柄でビハインドを負わされている。
 しかししかし。『ごっちゃんです!!』は面白かったのだ。いやそれは言い過ぎか。控えめに言おう、『面白くなりかけていた』。久し振りにつの丸は『漫画』の巧い人である、ということを思い出させてくれる作品だった。
 まず、カチのキャラが良い。とても良い。前向き単純強いバカ、というのがここまで清々しいものとは新しい発見である。また、最終回で見せた『負けると途端に弱気キャラ豹変』特性も素晴らしい。全く隙のないキャラクター造形であった。
 そして重要なのが、人情要素の放棄である。後期マキバオーは過剰な人情路線によって話を臭く寒いものにしてしまったが、『ごっちゃんです!!』では(恐らく)意識的にそれをセーブしている。主人公ごっちゃんが「ごっちゃんです」としか喋らないのは安易に人情話にしないための枷として機能しているのである(断言)。