こんな才気が煥発したら僕はもう…!(今週のテニス(Genius 332『お膳立て』))

「サーブを打ったらコートの外へ出ぇ 2対1でも止むを得へん」
「俺も退がるとしよう」

 出ました。来ました。許斐です。最高純度の許斐剛。永いテニスの歴史上でも「一人でダブルス」以来といえる暴挙の実用新案・「二人なのにシングルス」のお披露目です。「分かるな?」じゃないですよ白石部長。『才気煥発の極み』がダブルスでは使えないって第何世界の常識ですか。財前くんもあっさり納得してんじゃねえ。
 いやね、言ったよ。確かに言った。「手塚ゾーンがある以上、乾先輩はやることがないのでは?」とは僕も確かに言いました。許斐先生答えて曰く、「そうだね、何もすることないね」。先生……っ! アンタ凄ぇよ……キラキラしてるよ……!(それは才気がカンパツしてるからだよ)
 あれですね、許斐先生は本当にごまかさないお人ですね。一度吐いた嘘をごまかさない。どころかさらなる嘘への踏み台とする。この“狂気の系統樹”を目撃することこそ許斐ッ子最高の喜びであるよなと感じ入りました。樺地VS手塚戦をも彷彿させます。許斐の漫術は後退のネジを外してあるんだよ。
 ・「このオーダーだけは予想外やったな」
 あと細かいところ。この発言を見るに、オサムちゃん的にはS2手塚だったのでしょうな。氷帝戦と同じように。つまり石田師範には実のところ手塚抹殺こそが期待されていた、ということでしょう。
 歴史に if は禁物ですが、後世の歴史家たちはそれでもこの日の if を問わずにはいられないでしょうね。「もしあの日テヅカがS2に出ていれば」「もしあの場にカワムラが存在しなければ」。さすれば手塚はその揺籃期のうちに死んでおり、後にあの全地球規模の大災害が──“審判”と呼ぶものさえいるあの大カタストロフが──引き起こされることもなかったであろうに、と。やったぜタカさん。歴史に名を残したよ。