森博嗣『Φは壊れたね』感想
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/09/10
- メディア: 新書
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さて、博士過程に入って面倒見の良い先輩キャラを獲得した西之園萌絵や、長い付き合いで人間が丸くなった国枝先生(なにせ学生に対して「ばいばい」なんて言ってる)など、五年間での微妙な性格の変化を描いてるのは巧い。犀川の出し方もあれくらいで丁度良い。新キャラたちもそのうち味が出てきそう。ストーリーは良くも悪くもあっさりしていて、最後まですいすい読める。はいはいなるほどねー評価:【B】。そんな感じ。
しかし、それで良いのか。この作品のテーマと言いますか本質と言いますか、そんなようなものに僕の理解はさっぱり届いていないのでは。そんな不安も残る。
タイトルを読み解かねばならないだろう。『Φは壊れたね』。英語副題は『PATH CONNECTED Φ BROKE』。こちらのΦは空集合のΦ。空集合の記号は文字コードによっては表記できないので、ギリシャ文字のΦで代用する。それを念頭に訳せば『空集合に至る道は壊れた』だろうか。
やっぱりわからない。困った。
S&Mシリーズでは、『犯行の真の動機なんて誰にもわからない、犯人自身にだってきっとわからない、理解しようなんて無駄だ』だった。
Vシリーズでは、『実際に何が起こったかなんて誰にもわからない、犯人自身にだってきっとわからない、だから探偵っぽい人がそれらしい理屈を言えばそれが真実になる』だった。
それを経て、今回のQシリーズでは『実際に何が起こったかなんてどうでも良いや』になった、のだろうか?
もう少し考えないとだな。
暫定で評価:【B】としておきます。